2024/01/06(土) 02:14
佐久市の移住で失敗する典型3パターン -住まい・仕事・コミュニティ-
「佐久市へ移住をしてみたいけど、うまくいくのだろうか?」
「移住した後にいろいろトラブルがあると聞くけど、大丈夫なのだろうか?」
といった不安をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
しかし、移住で失敗するパターンはそんなに多くはありません。
住まい、仕事、コミュニティの3つの部分を押さえておけば、おおむね問題ないのではないかと感じています。
そして、あらかじめその失敗パターンが自分に当てはまるのか、当てはまらないかをイメージしておけば、安心して移住できますよね。
今回は、佐久市の特徴も把握しながら、移住での失敗パターンについて見ていきたいと思います。
住まいの失敗
畑の大変さ:庭付き一戸建ての幻想
地方での暮らしと言ったら、庭付きの一戸建てで、畑作業をしたいという方も多いと思います。
しかし、これまで畑作業をした経験がない方には、いきなり庭付きの戸建てというのはあまりおすすめできません。
というのも、夏場はしっかり手入れをしないと雑草が大変なことになり、それによって蚊が発生するということもあるからです。
自分の家の庭となると毎年手入れが必須になりますが、近隣で無料もしくはそれに近い形で畑などを貸してくれる人が確実にいるので、近くで借りるところからのスタートでも良いのではないかと思います。
寒さ:古民家の見た目の魅力とのギャップ
佐久市は市役所があるところも標高が約700mと、高尾山よりも高い位置にあります。
そのため、夏は涼しいのですが、冬場は最低気温がマイナス10℃以上の日が出てきます。
古民家は安くて、また雰囲気も良いので、のどかな生活がイメージできて良いなという方も多いと思います。
ただ、実際は立地と機能の2つの面で大変な場合が多いです。
昔は農業が中心だったため、日当たりの良い地域は畑にしていました。
そのため、住まいが建てられるのは北側の日当たりの悪い場所ということが多かった歴史があります。
日当たりが悪いと寒いだけでなく、雪が解けなかったり、路面が凍ったままになってしまったりと大変なことが多いです。
東京などではイメージしづらい方が多いかもしれませんが、冬の朝は車のフロントガラスが凍ってしまって、それを解かすのに時間がかかるというのが寒い地域での日常です。
また、古民家は、古く木造の建物が多いため、冬はすきま風があったり、閉じていても窓からの冷気が厳しかったり、家の中を暖めると結露がすごかったりということがあります。
移動は車が基本:必ずしも駅近が良いわけではない。車は1人1台
今の生活では車を使っていないという方も多いのではないでしょうか。
駅の近くに移住すれば、徒歩と電車でなんとかなるとお考えの方も多いのではないかと思います。
残念ながら、佐久市を通るJR小海線は朝夕の通勤・通学時間は1時間に2本程度、日中は1時間に1本あるかないかというレベルです。
主な移動は新幹線という方であれば30分に1本ありますが、市内の移動となると、バスの本数も多くないので自家用車が必要になります。
そうなると、家を探す際にも駐車場は最低1台、できれば2台止められるところが良いかと思います。
佐久市は平成になってからいくつかの市町村が合併してできたまちなので、旧市町村の中心街であれば徒歩で暮らせる環境の地域もあります。
ただ、そういったエリアの物件はなかなか出てこないので、地域の不動産屋さんに聞くのが良いかもしれません。
想定外の生活コスト:夏は冷房不要でも冬の暖房費は高い。上下水道代も
住まいについては、都心に比べると家賃も安く、広い部屋で暮らしている人が多いと思います。
一方で、都心ではかからないコストもかかってくることには注意が必要です。
1つは光熱水費です。
佐久市は、夏は涼しいと言われています。
それは、熱帯夜が観測史上一度もないということからもわかるのではないでしょうか。
そのため、夏は冷房をつけないで扇風機だけで生活するという家庭も多いです。
一方で、冬は寒いです。
暖房を使うにしても、ガスが都市ガスではなく、プロパンガスなので料金的に割高になっているため、ガスストーブよりも石油ストーブを使う家庭が多いです。
また、人口に対して地域の面積が広いため、上下水道代が都心に比べて若干割高ということもあります。
日頃から自家用車を使うため、その維持費もかかります。
ガソリン代は全国でもトップクラスで高いですし、細かいところですが冬はスタッドレスタイヤが必要なので、その付け替えや保管の費用というのもかかってきます。
車の違反に対する警察のチェックも厳しく、一時停止をしないで罰金といった“洗礼“を受けるのも移住者同士ではよく会話になるところです。
その他には、あまり大きな金額ではありませんが、自治会への加入が求められるのでその費用も必要になってきます。
そういったコストがかかるということは認識しておくと良いかなと思います。
環境に関する失敗:騒音、におい、災害
こちらは、物件を事前に見ればある程度把握できることではありますが、佐久市の季節性、特有のものもあるのでご紹介します。
1つは、音に関するものです。
佐久市の場合は、工業団地として分けられている事が多いので、工場の騒音というのは感じる地域は少ないのではないかと思います。
あるとすれば、大きな病院があるので、その近くは救急車の出入りが多く、頻繁にサイレンの音を聞くことになると思います。
佐久市は夜とても静かなので、少し離れていても、電車の通る音が聞こえることもあります。
騒音というよりは、それはそれで風情のある様子です。
風情という点では、夏のカエルの鳴き声もすごいです。
佐久市は水が豊かで、田んぼや用水路が多いため、夏はカエルの大合唱が聞けると思います。
2つめは、においに関するものです。
田んぼや畑では、収穫が終わった後に出た草を燃やすので、冬はワラが燃やされたにおいがすることが多いです。
農家のみなさんも配慮していただくので、家の近くで燃やすことは基本的にはなく、開かれた田んぼや畑でのことになりますが、風にのって洗濯物へにおいがつくなどの影響もあるので、その点は気にしておくのも良いかと思います。
また、においに限らずのことになりますが、農薬を散布する場合もあるので、風向きによってはそのような影響も出てくるということも、意識しておいて損はないかと思います。
最後に細かい部分をいくつかご紹介すると、ごみの分別が厳しく、ごみ袋に名前を書いて出すというのも特徴です。
また、佐久市の中でも地区によって分別方法が異なります。
たとえば、臼田地区では生ごみは別の袋に入れて出します。 そして堆肥として再利用されるのです。
インターネット回線は基本的に光ファイバーが使えますが、プロバイダーによっては適応していない会社もあるので、そのまま同じプロバイダーを使い続けられるかは確認が必要です。
災害関係については、佐久市では活断層が発見されておらず、地盤も固いため地震には強いと言われています。
ただ、水害が多く、5年前の2019年に、台風19号で大きな被害が出ているので、ハザードマップの確認はしておくと良いと思います。
活火山の浅間山については、風向きの関係もあって、歴史的に大きな被害は出たことはないようです。
仕事の失敗
仕事については、2つの特徴があります。
1つは、給料が下がることが多いということです。
理由としては、都心に比べると零細企業が多く、同じ職種でも賃金単価が安い求人条件となっています。
給料が低いので、業務も楽になるかというと、それはそれぞれの会社によるものかと思います。
ただ、確実に言えるのは都心に比べると今お持ちのスキルは非常に重宝されるということです。
佐久市に限らずだとは思いますが、地方では人材が不足している状況にあります。
最先端の情報に触れる機会が少ないため、都心で実践してきた内容が最先端の情報として活かされることも少なくありません。
そういう点ではやりがいのある業務が多いのではないでしょうか。
もう1つは、求人の職種が限られるため、なかなか仕事が見つからないということがあります。
都心で必要とされる仕事は、必ずしも佐久市で必要とされるわけではありません。
たとえば「SNSマーケティング」という言葉でいうと、佐久市では
”良く聞くけど、なにかわからない”
”成功している企業がないので、実践してみようとは思わない”
”自分たちでやってもうまくいくかわからないので、取り組もうと思わない”
といった意識の会社もまだまだあります。
そのため、そもそも求人として出さない会社が多く、自分の得意が活かせる求人が見つからないということが多いかと思います。
最近は、リモートワークが増えてきているため、移住者の方々は、仕事は都心の会社でリモートで実施して、生活は佐久市という方が多いです。
また、求人についても佐久市内にこだわらないで探すと見つかるケースが多くあります。
軽井沢や御代田町など、近隣の市町村に通勤している人も多いです。
佐久市では車で30分〜1時間の通勤というのは当たり前なので、近隣の市町村で探すというのも良い方法かもしれません。
コミュニティの失敗:隣近所との適度な距離感での付き合い方とは
移住の失敗で一番多いのは、実はこのコミュニティの失敗かもしれません。
郷に入っては郷に従えということわざがありますが、その通りで、やはりもともと住んでいた人たちが多数なので、移住していく身としてはある程度地域に合わせる必要があります。
その最たるものが、自治会かと思います。
自治会では、近隣の清掃をしたり、川の清掃をしたりと季節に応じた活動があります。
毎回2〜3時間ぐらいの活動になると思いますが、それに出ないと出不足金といって、2000円や3000円程度の罰金のようなものを払う地域も多いです。
以前は出ることが必須だったのですが、移住者が増えてきて出られない家庭もあるので、お金で解決しようと地域側が変化してきたという経緯もあります。
こういった形でその時々の状況に合わせて対応していくといった側面もあります。
ただ、その変化のスピードは決して早くないので、急がないことが大切です。
佐久市は車社会なので、歩いている人は非常に少ないのですが、歩いている人同士ですれ違うと挨拶をする関係です。
小学生たちもすれ違うときには挨拶をしてくれるので、都心とは違う温かさを感じると思います。
しかし逆に言うと、挨拶をしないと変な人と思われる可能性があるので、注意が必要です。
中古の一戸建ての場合だと、隣近所が顔を知っている人同士であることが多いので、引っ越しの挨拶に行くということも大切になってくるかもしれません。
都心だと、来られても困るという家庭もある中で、大きなギャップかと思います。
もちろん、佐久市も移住者が多い地域やアパートなどだと挨拶をしないといった地域も多いので、そのあたりは不動産屋さんに聞いてみていただけると良いかと思います。
また、野菜やお米を育てている家庭が多いので、夏には野菜のおすそ分け、秋にはお米のおすそ分けをいただくといったこともあるかと思います。
野菜の場合は特に育てすぎてしまって食べきれないということが多いので、お返しをしなきゃいけないということでもありません。
そういったやりとりが地域の方々同士でのコミュニケーションの機会となっているので、うまく活用して地域に溶け込んでいただくのが良いかと思います。
中には、家のドアにいつの間にか野菜が置かれているといったケースもあるのですが、それはそれで誰なのかと予想してみるのも面白いですね。
野菜をあげたと思われると、気を使わせてしまうかなという農家の方の配慮かもしれません。
もともと住んでいる人というと、多数派で強い立場と考えがちですが、実は来てもらう側からすると、地域に活気が出てありがたいという声も多いです。
また、都会の人は濃いコミュニティが苦手だろうと、野菜をドアにかけるといったような形で気を使ってくれる人も少なくありません。
どちらかというと、シャイな人が多い佐久市民ですが、話してみると温かい人たちなので、ぜひそういった方々をご紹介して、輪を広げていけると良いなと考えています。