2024/05/30(木) 23:13
地方移住のメリットとデメリットと注意点:成功する人が共通して持っているものとは
移住をしてみたいという方にお話をお伺いすると、求めているのは、
- ワークライフバランス(丁寧な暮らし)
- 農ある暮らし
- 地域貢献
あたりに集約されることが多いです。
実際、地方移住ではこれらを満たすことができます。
一方で、生活を変えるということは、失うものもあるはずで、それが何かをしっかりと把握した上で移住したいですよね。
また、せっかく移住を決断しても、行ってみたら想像と違ったということで、移住失敗という話もよく聞きます。
そして、そんなリスクを減らす方法もあるんです。
もちろん、いくら準備をしてもリスクをゼロにすることはできません。
しかし、これまで多くの移住者の方々を見てきて共通して持っている1つの考えというものもわかりました。
そういった点を把握いただくことで、少しでも移住のハードルが下がることになれば幸いです。
地方移住のメリット
仕事と生活の区別がなくなる
地方移住の一番のメリットは、仕事と生活の区別がなくなることだと思います。
都心に住んでいると、仕事は仕事、生活は生活と明確に分かれています。
そのため、ワークライフバランスといった言葉が言われています。
しかし、地方に来るとその区別がなくなってしまうんですね。
都心で暮らしている方は、職場で顔を合わせている人と生活でも顔を合わせるのは嫌だと感じる方も多いかもしれません。
しかし、地方は人も少なく、仕事も少ないです。
東京のように毎回違うお客さんと付き合うのでなく、お得意さんが多いということ、また初めての人でも共通の知り合いがいるということが非常に多くなります。
そのため、仕事の方法が、東京のように今回で終わりという関係ではないため、お互いに末永くお付き合いしましょうといったスタンスになります。
良い感じでお互いが気を使うので、お金を追い求めるような仕事上のストレスはなくなるのではないかと思います。
五感で自然を感じられる環境になる
都心で暮らしていると、空を見ることもなく、緑を感じるには公園へ行く必要があるかと思います。
それが、地方での生活となると、外に出るだけで自然が感じられます。
家の外には自然があふれていますし、空が広いです。
こういった視覚的に自然を感じられる環境が地方にはあります。
昼間は車の行き交う音が響き、夜はセミの声ぐらいしか聞こえない家の中ではなく、昼は鳥の声が聞こえて、夜はカエルの大合唱の中で眠るといった生活になります。
リラックス音楽などで、川の流れの音や鳥のさえずりの音楽をかけなくても、聴覚に自然が流れ込んで来る感じです。
そして、近くには管理するのに困っている畑や耕作放棄地もたくさんあるので、野菜を育てたいなと思ったら育てられる環境があふれています。
夏場には余った野菜が家のドアノブにかかっているといったことも珍しくなく、味覚、触覚で自然を感じられるというのが地方移住です。
選ばれる人材ではなく、求められる人材になる
東京だと学校や会社などでは成績を上げる、出世をするといったことで、選ばれる人材になることが求められます。
しかし、成績を上げたり、出世をしたりしても、それでお礼を言われるということはないのではないでしょうか。
頑張ったねとほめてもらうことはあっても、誰のためにやっているのかと疑問に感じることもあるのではないかと思います。
それは、結局、自分のために頑張っているだけで、他の人のためになっていると実感ができないからだと思います。
それが地方だと、お礼を言われる機会が激増します。
たとえば、先に述べた家の前に勝手に野菜が置いてある事件ですが、これは食べ切れないほど作ってしまった。
しかも、少し傷があったりして販売できるほどのものではない。
でも、味はおいしいから、食べてもらいたい。
そんな想いを持った農家の知り合いの方が置いていったものです。
都会の人間からすると、おいしい野菜をもらってしまって申し訳ないという気持ちになりがちですが、農家の方からすると、食べてもらえて嬉しいという想いがあるんですね。
そのため、もらってくれてありがとうといった感謝の気持ちをいただきます。
会社で旅行に行ってきた人がお土産を配っていて、いつももらいっぱなしで悪いなみたいな環境とは全く別ということですね。
また、地方では圧倒的に人が少ないです。
そのため、その人が持っているスキルが地域でのオンリーワンのスキルということがよくあります。
しかも、そのスキルというのはこれといった技術に限りません。
たとえば、地域によっては50代の移住者が「若手」になることがあります。
これは高齢化が進んでいる地域の場合ですが、そういった地域は体が動く人が少ないので、50代が若手で、体を使った仕事をしてくれるのでありがたいという状況です。
また、地方には東京はすごいと思い込む東京信仰のようなものを持っている人も多く、東京から来た人というだけ、いろいろな経験を持っているだろう、すごい人なのだろうと思ってもらえるという部分もあります。
そうなると、いろいろな相談をされたり、力を貸してほしいと声をかけられたりという場も多くなり、地域から求められているということを感じる機会が多々出てくるのではないかと思います。
本人としては趣味でやっている程度のものだと考えているものが、その地域の人たちにとってはオンリーワンのスキルで、いろいろなところで引っ張りだこになるということもあります。
たとえば、写真を撮ることや、コーヒーを入れるといったこともそうですし、木工細工のようなものもあります。
自分では楽しいからやっているということが、地域の貢献できる機会が見つかるかもしれません。
地方移住のデメリット
一方で、地方移住のデメリットも存在します。
これをデメリットとして感じるというのは、東京的な価値観だからといった見方もあるのですが、友人など東京にいる人たちと関わる際には劣等感を感じる原因ともなるので、しっかりと把握しておきましょう。
東京的なライフスタイルは送れない(消費者的な楽しみ方から生産者的な楽しみ方へ)
当たり前かもしれませんが、東京にあるものは地方にはありません。
娯楽施設や移動に便利な公共交通施設、何でもお金で解決できるサービスといったものがないです。
そのため、東京の人からすると、地方で暮らして何が楽しいのと言われることもあると思います。
ディズニーランドもないし、新しい飲食店もないし、目に見える変化も少ないと思います。
地方の高校生は大学に進学したら東京に行くんだといった思いを持つ人も多いです。
それは、東京に行けば何か大きいことができそうとか、いろいろな人がいて、刺激が多そうといった考えからだと思います。
人が多い地域では、変化が多いので、受動的に受ける刺激は多いと思います。
しかし、それは自分は何も変わっておらず、周りが変化しているだけです。
地方では、周りの変化が少ないので、刺激を求めるとしたら、自分が動くしかありません。
中学生や高校生が地域がつまらないと言っているのは、受け身の娯楽に慣れているからだと思います。
ゲームや動画といった面白いものがどんどん提供される環境になると、それが提供されない地域は面白くないと感じてしまうからです。
一方で、見方を変えると地方は変化がないので、変化を起こし放題です。
自分から変化を起こすとその広がりによる反響が面白いほど返ってきます。
それが時には大変なときもあるかもしれませんが、自分から作っていく楽しさというのはなかなか味わえないものだと思います。
中には、すでに東京でもそういった自ら作り出す人もいるかもしれませんが、そういった方は地方に行くと大きな台風の目となる可能性が高く、地域活躍できる可能性大です。
東京だと消費者となって楽しむことがメインかと思いますが、地方だと生産者となって楽しむといったことがメインになってくると思います。
お金によるものさしでは劣等感を抱く。可処分所得ではなく可処分時間
リモートワークで東京の会社で仕事をし続けながら地方に移住するとなると、話は別ですが、地方の会社に就職した場合は給料は減ると思います。
そのため、同期や同級生と給料の話題になった時は劣等感を感じるかもしれません。
お金は数字で見えてしまうので、そのあたりは明確です。
もちろん、地方であれば、家賃が安かったり、食費が安かったりと生活費が安くなるといった面はあります。
しかし、生活コストが安くなる金額よりも収入の減額のほうが大きいというのが一般的かと思います。
それだけ、東京で働く方が儲かるということですね。
毎月貯金できる金額が減るかもしれませんし、そうなると旅行に行くといった大きな出費を伴うことができる機会は減るかもしれません。
では、その代わりに地方で得られているものはないかというと、時間です。
たとえば、旅行で非日常を味わおうとなったら、東京からだと1時間〜2時間かけて出かけるということが当たり前かと思います。
それが、地方では車で数分のところに温泉があったり、キャンプ場があったり、スキー場があったりということが普通です。
東京では非日常だったものが、日常にあるんですね。
この日に旅行に行こうといった計画を立てなくても、今日は天気が良いからキャンプに行こう、バーベキューをしよう、川遊びをしようといったことができてしまいます。
逆に天気が悪いから翌週に延ばすといったことのハードルも低くなります。
そんな可処分時間が格段に増えるというのが地方での暮らしかと思います。
他にも、東京だと仕事で雑談というのは無駄な時間、アイスブレイクのために行うものという意識の人が多いのではないかと思います。
というのも、雑談の内容が政治だったり、メディアで報道される出来事だったりと自分の生活と直結していないことが多いからです。
一方で、地方だと雑談の内容が、今度学校が統合されるらしいとか、その統合された後の学校はこういった活用をされるらしいといった身近な話題が多いです。
そのため、自分自身の問題として捉えられるので、単純に興味を持って聞けますし、それ自体が地域の情報収集といった価値をもつものになります。
中には地方の新聞やテレビといったメディアには出ていない情報も多いので、そういった情報は貴重な価値を持ちます。
本来の仕事の要件以外の話をしていて無駄な時間だと感じる人もいるかもしれませんが、そういった無駄な時間を楽しめるというのも地方の面白みだと思います。
この無駄な時間を過ごすというのは、考え方によってはぜいたくな時間の使い方ではないでしょうか。
東京的なライフスタイルだと、効率的な生活を考えがちですが、あえてそれをしないで生きていく。
目標に向かって直進していくだけが、必ずしも最も早く目標を達成する方法とは限りません。
それを実感できるのが地域です。
1分1秒を惜しんで無駄にしないように気をつめる必要がなく、そういった時間の使い方が結果として、自分や地域を豊かにすることにつながっているのではないかと思います。
地方移住の際の注意点
これまで地方移住のメリットとデメリットについて述べましたが、実際に移住をするとなると、大きな決断かと思います。
引越し費用などもかかるので、失敗はしたくないですよね。
移住した後に意外とこういうことに困ったといった事例についてご紹介できればと思います。
住まいと暮らし:移動手段は車がメイン、古民家は生活には不便
首都圏では家は駅の近くをといった考えの方が多いかと思いますが、地方の駅チカはあまり意味がありません。
というのも電車の本数が少ないので、使っているのは朝夕に地元の高校生がという場合がほとんどだからです。
移動はもっぱら車です。
車であれば電車のように時間に縛られることはありませんが、免許証を持っていない方は取る必要が出てきます。
長い間運転をしていないという方には、地方の教習所ではそういった方向けの講習があるので、受講してみるのも良いと思います。
東京に比べると車は少なく、道路も広いことが多いので、運転はしやすいかと思います。
極力、車を使わない生活をしたいという方は、スーパーなど生活に必要な施設が徒歩圏内にあるかといったことを把握しておくことが大切かと思います。
住まいについては、田舎暮らしなら古民家でと考えている方も多いと思います。
しかし、古民家は古いので、生活には不便です。
風通しが良いので、冬は寒いですし、虫も入ってきます。
冷暖房も聞きにくいといったこともあります。
リフォームをするなど、ある程度手をいれれば解決する問題もありますが、いきなり古民家というのは大変だと認識しておいていただくと良いと思います。
また、庭が付いていることも多いと思いますが、庭は雑草取りが大変です。
夏場にはこれでもかというほど伸びてくるので、2〜3回は草刈りが必要になってきます。
別に草ボーボーでも構わないという方もいらっしゃるかもしれませんが、草刈りをしないと蚊が出てきて被害を受けることになるので、気をつけてください。
畑をやりたいなという方は、まずは近くの畑を借りるところからスタートしてみるのがおすすめです。
仕事:仕事はあります。ただ、業種に限りがあります。
地方は仕事がないからと言われますが、これは事実ではありません。
地方に仕事はあります。
ただ、業種に限りがあったり、条件が合わない仕事ばかりということが課題かと思います。
どの地方でも介護や農業の職種は人手不足です。
そういった職種の仕事をしたいという方であれば仕事は見つかりやすいと思います。
また、将来的に地方へ移住したいという方はこのあたりのスキルを身につけておくと良いかと思います。
逆に、今働いている仕事と同じような内容で働こうとなると、仕事は見つけにくいかと思います。
もし見つかったとしても待遇面では首都圏の会社に比べると悪くなることがほとんどだと思います。
たとえ、移住前に仕事が見つかっても、実際に働いてみたら合わなかったとなった際に、新たな仕事が見つかりにくく、やり直しが効かないといったリスクがあるのが地方です。
もちろん、受け入れる側の会社もずっとその地域で暮らしていこうという方を受け入れるので、しっかりと対応はしてくれるとは思いますが、合う合わないについては働いてみないとわからない部分も多いかと思います。
こういったミスマッチを防ぐためには、移住前に会社を訪問してみたり、地域で情報収集をしてみるといったこともありかと思います。
移住前にはその地域を見ることが多いと思うので、一緒に仕事関係の状況も把握しておきましょう。
コミュニティ:市町村レベルの中のコミュニティ単位で見る必要がある
地域になじめないというのは移住を断念する要因で最も大きな部分ではないでしょうか。
この地域になじめない問題は、必ず地域の人たちと移住者の考えのギャップから発生しています。
たとえば、引っ越してきたら近隣にあいさつをするのが当然だと思っている地域と、隣近所に挨拶に行っても迷惑なだけだと思っている移住者。
人口が減っているので地域を盛り上げる活動をすれば歓迎されると思っている移住者と、衰退するとはわかっていても無理してまで活動しようとは思っていない地域といった形です。
移住については、市町村レベルでPRをしていることもこのギャップを生む一つの要因となっています。
なぜかというと、実際の地域は市町村よりも細かいコミュニティに分かれて運営されているからです。
あるコミュニティは観光客がたくさん来ているのに、別の地域では全く来ていない。
ある地域は移住者がたくさん来ているが、別の地域は昔から住んでいる人ばかり。
というのは良くあることです。
自治体職員としては、市町村全体を見ていて、良い地域だと思っているので、ぜひ来てくださいというPRをしますが、移住をするにはその中の特定の地域を選ぶことになるので、事前にそのエリアについても把握しておく必要があります。
この点については、移住の窓口の自治体職員よりは、地域の不動産屋さんや地域の公民館のような公共施設の人たちに聞いたほうが内情がわかると思います。
移住する場所を訪問する時は、ホテルに宿泊ということが多いと思いますが、希望しているエリアの宿泊施設に泊まってみるというのも情報収集の方法としては良いと思います。
移住後のリスクを減らすための3つの工夫
最後に、これまで述べてきた内容を元に、移住後のリスクを減らすための工夫について述べたいと思います。
自分が何を大切にしているのかを認識する
先にも述べた通り、東京と地方では大切にするものが違う、価値観が違います。
移住を決断する人の多くは、お金ではなく、心の豊かさを大切にしたいという思いをお持ちかと思うのですが、同窓会や同期会のようにもともとの東京のコミュニティの価値観の中に入ると、本当にそれで良かったのかとゆらぐこともあります。
もちろん、ゆらぐのであれば、戻るという選択もできるだけですが、自分は本当に何を大切にするのか、そこをはっきりさせておくことが重要かと思います。
中には、お金よりも心の豊かさだと思って移住したけど、やはりお金も大切だったと再認識する方もいらっしゃいます。
ただ、その場合も地方で起業するといった地方の良さも保ちながらリスクを取っていくといった方も多いです。
また、地方での起業の場合はお金というよりは、自分の好きなことを仕事にする、地域に貢献するために事業をするといった想いで取り組む方が多いのも事実で、売上の規模よりもやりがいを重視しているというのが実態かと思います。
今、自分が何を大切にしているのか。
そして、将来は何を大切にしていきたいのか。
それを明確にしておくと良いかと思います。
事前の情報収集と訪問。できれば人間関係を構築
地域の情報については、ある程度インターネットで把握することができます。
移住で人気の地域ほど、移住者がブログで発信をしていることも多いので、ネガティブなことも含めて情報は得やすいのではないでしょうか。
ただ、やはりインターネットでは情報に限界がありますし、現地を見てみることでわかることも多いです。
交通費などの負担もかかりますが、何回か現地を訪問してみることがおすすめです。
その際に、地域によっては移住体験住宅などを運営しているところもあるので、ホテルではなく、そういった施設に泊まってみると地域の人たちを紹介してくれるなど、つながりができるので、より生活をイメージしやすくなるかと思います。
地方では初対面の人と会うときは、誰か共通の知り合いを通したほうが話が通りやすいので、地域に知り合いがいるというのは大きな強みです。
逆にいうと、知り合った地域の人が合わないなと感じる場合は少し様子を見てみるのが良いと思います。
お子さんの就学など時間的に余裕がない場合は決断をせざるを得ないときもある場合は、移住後に他のエリアへ転居することもありうるということを想定しておいても良いと思います。
収入と支出の把握
地方にはお金とは違った豊かさがあります。
とは言いつつも、最低限のお金は必要です。
収入がどうなるか、支出はどの程度になりそうかということは把握しておきましょう。
収入が減ると、心の余裕もなくなりがちです。
心の余裕がなくなると、楽しめるものも楽しめなくなってしまいます。
収入が減った場合、どういった生活になるのか、周りの反応はどうなるのかということも想像してみましょう。
実際に、移住前に支出を絞って疑似体験してみるということも良いと思います。
移住に成功している人が共通して持っているもの
最後に、多くの移住者のみなさんと接してきて、そして私自身も感じている共通点をお知らせします。
それは、失敗した時のことを恐れないという気持ちです。
もちろん、失敗したくないという気持ちはみなさんお持ちです。
ただ、どれだけ予防をしようと思っても、100%リスクを排除することはできません。
むしろ、それによって、移住の機会を逃してしまうということの方がもったいないと思います。
失敗してもなんとかなるさと考える人が多いというのも事実でして、その気持を持っていれば万が一うまくいかなくても、すぐに前向きになれると思いますし、そういった考えの人はもともとが前向きなので、地域でもうまくやっていけることが多いです。
とは言っても、怖いという方もいらっしゃるかとは思います。
お金に余裕がある場合は、二地域居住からスタートするというのも良いと思います。
とは言え、みなさんそういう気持ちはお持ちです。
先輩移住者の話を聞いたり、相談に乗ってもらうと、楽になる部分も出てくると思います。
自治体の行う移住セミナーでは先輩移住者の経験談を聞ける機会も多いので、おすすめです。
私も移住経験者としてご相談に乗れますので、お気軽にお声掛けください。